「試聴無しでも失敗しないスピーカー選び術」

一時代前の単行本のタイトルの様ですが、今までのスピーカー開発から見出した、聴かずにスピーカーユニットを選ぶコツを、製品化されたスピーカーに当てはめて考えてみました。

弊社は個人事業で、自前の商品を多くのオーディオ店で試聴で来る環境を整える事は極めて困難です。更に、最近都内の家電量販店を覗いてみましたが、オーディオフロアにオーディオがありません。簡易なミニコンポや、スマフォ用の物、昔のラジカセ相当の商品しか扱われていません。全国のオーディオ店と言っても、1970年代の頃とは異なり、身近にオーディオ店などほとんど無いのが今ではないでしょうか?

ネットショップを運営していると、全国のお客様からご注文やお問合せをいただきますが、考えてみれば、気に入ったスピーカーを、お近くのオーディオ店で試聴できる、そんな環境でお暮しの方はどれほどの数なのでしょうか。 ご存知の方も多いと思いますが、特に高級オーディオ店は俗に言う敷居が高く、とても知識のない方、もしくは金銭的都合の方はとても足を踏み入れるには勇気がいります。その上、ショップによっては取扱いの有無で、注文しなければ視聴は出来ない機種も沢山あります。

れに引き替え、ネットショッピングは、それこそ全国どこでも同じ環境で物を選べ、行かずしても玄関先まで届けてくれる便利なシステムです。オーディオ機器を購入するのでも例外ではなく、口コミや雑誌等の評価を加味しながら自分に合った物を探し出していると思います。 その中で最大の欠点は、「試聴できない」ことだと思います。見て、聴いて、時には触って商品を確認(納得)する事は、消費者にとっては賢い買い方であることは、今も昔も変わりません。ですが、その為に大都市へ出かけ、多額の交通費と貴重な時間を割き、更には当然良く聴こえるオーディオルームで、ご自宅の環境と全く異なる所で試聴させられ、それで正確に選べる方はどれほどいらっしゃるのでしょうか。それこそ、プロ並みのオーディオ歴をお持ちの方位で、既に一般の方は「自分には無理」とお感じではないでしょうか。 それならばいっそ、スピーカーを選ぶ知識を元に、ネットで交通費と時間を節約し、100%ではなくとも概ね好みの物であれば、納得のお買い物になるのではないでしょうか。そんなことを考え、出来る範囲でまとめてみました。

に、弊社では、スピーカーユニットを視聴して購入するなど考えられません。そもそも、これ程多くのユニットを、聴ける状態で販売する店など存在しません。 有ったとしても、商品数が限られ、特に新商品に対応するまでに時間がかかります。最も重要なのは、そのユニットの性能を最大限引き出した箱(エンクロージャー)になっているでしょうか?正に皆無です。 最高のポテンシャルを発揮するには、そのユニットに有った箱(エンクロージャー)が必要です。それを導き出すには、相当の実験を繰り返し、ようやくたどり着ける境地です。 オーディオ機器の場合、扱いにくく、癖が強くても、最高の音を出す物を良質と捉え、無難な物より優れているとされます。箱のセッティングが有っていない事で、本来は良質の物でも、無難な物以下の性能になってしまう場合もあります。このことから、中途半端に試聴にこだわれば、逆に選択肢を狭めてしまいます。 長年このビジネスを続けて来て、デザインや作り等から、設計者の意図をくみ取り、自分がそれを思い入れを持って受け入れられるか、それが弊社の目指す物であるかを考え選んでいます。 今では、失敗したと感じる事は殆どありません。そんな見方を知識として持つ事で、全く違った、より購入者の理想に近いスピーカー選びが出来るのではないかと感じています。

 

●大きさとユニット構成

●スピーカーの形式

●デザインから見える音の世界

●ユニットの違い(ウーハー編)  
     ・ペーパーコーン  
     ・アルミコーン  
     ・カーボン繊維  
     ・ガラス繊維  
     ・ポリコーン  
     ・セラミックやその他
     ・スピーカーエッジ  
     ・ボイスコイル(VC)  
     ・フレーム(フランジ)  
     ・フェイズプラグ、センターキャップ  
     ・マグネット

●ユニットの違い(ツイーター編)

●スピーカーボックスの違い
      ・ボックスの響き 
      ・素材

●ネットワーク
      ・クロスオーバー

●サブウーハー

●商品への思い入れ

●弊社の取組


 

 

●大きさとユニット構成

まず初めに、大きさとユニット構成を考えます。 大型でペア100万円以上の物は、今回の検証から外して考えます。その価格以上になると、買ったから良しと言う訳にはゆかず、調整等で多くの時間とお金が必要になる場合が多い為、別物として位置付けています。内容もだいぶ異なりますので、今回は割愛します。難しいのはそれ以下の金額で、お部屋に合わせた比較的小型の物でしょう。大型の場合、金額からどれを選んでもそれほど失敗は無いと思います。 極論ですが、真面目なメーカーであればその金額なら十分な性能を有していると考えられます。国際イベント等で、数百万円のスピーカーを購入する方の多くは、聴かないで買われるのが普通だそうで、特に自宅に合うかどうかのデザインで決める方が多いようです。 それこそは、先程の「この金額なら当然の性能はあるだろう」の判断だと聞いています。

て、大きさを決めるポイントですが、置かれるお部屋の環境と広さを考えます。スピーカーは、ステレオで楽しむ場合、最低でも2m位の間隔を空ける必要があります。 アンプ等の機材のすぐ脇に配置する方が多く見られますが、それこそメーカーのカタログ用の配置でしかありません。音ではなく、写真に納めやすいのでそうしただけです。 2m程度の間隔を取り、ツイーターの高さを音楽を聴く時の耳の高さに概ね合わせます。更に、背面の壁から出来れば40㎝位離し、両側の壁面より出来るだけ距離を取るのが理想です。 この環境を準備できる方は、置いた時に圧迫感がない程度の大きさのスピーカーをお選びいただけます。ですが、上記内容が困難な方が殆どではないでしょうか。私もその一人で、自宅では理想的環境を作ることは皆無と言っていいでしょう。

そうした場合、幾分小さ目のスピーカーを選ぶのが、失敗しない選び方だと思います。 スピーカーは、大きくなればなるほど、その発生する振動も大きく、反響する音の大きさも大きくなります。要するに、そこらじゅうに共振して、とても良い音を聴くどころではなくなります。2本のスピーカーどうしの共振(オンサの様に2本で響き合う)も大きく、これもかなり悩ましい現象です。 また、大きなスピーカーになるほど、音量を上げないと音のバランスが保てない物も多く、小音量で扱える小さ目を選ぶメリットは、その様な点にあります。 高さが45㎝程度であれば、現在のユニット性能からも、2Wayが理想でそれ以上を求める必要はないと思います。 ユニット構成が複雑になればなるほど、音のつながりが難しく、かえって濁った音になります。構成は簡単な方が失敗しづらい傾向はあります。

 

●スピーカーの形式

次に、形式を考えます。 バスレフ型、密閉型、パシップラジエータ型、バックロードホーン型、フロントホーン型、後面解放型、無限バッフル型等々、幾つかは聞いたことがあると思います。それぞれメリットデメリットがあり、それを知ることが重要ですが、必要なのは初めの3つぐらいでしょう。それ以外の方式も、それはそれで大変良い物ではあるのですが、個性的過ぎて一般のご家庭には合わないと思います。 キット製作やコレクションには良いと思いますが、デメリットを我慢できない方にはお勧めしません。


バスレフ型
さて、初めのバスレフ型ですが、スピーカーボックスに穴を空け、空洞現象を起してユニット裏側の音を利用する仕組みです。当然スピーカーユニットは、振動板を境に表側はプラス、裏側はマイナスの音が発生しています。その裏側の特に低域音のみを取出し表の音に合わせる考え方で、小さくてもしっかりとした低音が得られます。 穴の大きさとその長さ(トンネルの様な物)で、欲しい周波数帯を決定します。紙のパイプ等が良く使われているのは、その設計に基づくためです。 小型スピーカーでは最もポピュラーで、この方式では失敗は少ないと思います。ですが、重低音感を求めるあまり、中域が濁りや、いたずらに箱を大きくして低音を引き出せば、遅延音(特に裏側の音が出てくるタイミングが遅くなる)が気になり、 スピード感の悪いスピーカーとなってしまいます。それを見極める方法は、後程説明します。



密閉型
他に密閉型ですが、これはバスレフの逆で裏側の音を一切表に出さないで、完全に密閉してしまう方式です。基本的にこの方式は、バスレフのメリットは全くなく、ユニットが持つ低域再生能力が全てになります。 小型スピーカーでは低域不足をどうしても感じてしまうのはその為ですが、多くのメリットもある事は事実です。バスレフよりも箱を小さく設計できるので、全面から見て、寸法ギリギリのウーハーが付いているスピーカーの殆どが密閉型で、同じ大きさで一回り大きなユニットを使えます。ウーハーが大きいと言う事は、ユニットの持つ低域再生能力は、大きい方が有利ですから、その分低音が強いことになります。また、振動板が大きくなれば、その分表現力も向上します。もう一つ最大の魅力は、裏側の音を使わないので、全面だけのクリヤーな音を楽しむことが出来ます。当然スピード感(トランジェント)も良く、中音域の歯切れの良さや透明感などは、この方式が最も優れいていると言えます。 当然、遅延音もありません。お部屋の都合で、どうしてもこの小ささでなければ置けないという場合、低域不足からこの方式を選ぶには、少々冒険になる事があります。


パシップラジエーター型
パシップラジエータ型は、あまり耳慣れないと思います。この商品はあまり販売されていない為です。 特性は、バスレフと密閉型の間を取った印象で、コイルやマグネット等のユニットを電気的に(自発的に)動かす機能が無い、似たようなスピーカーユニットを別途取り付ける方法で、 昔は「ドローコーン」と呼ばれていました。(ドローコーンは40年ぐらい前に流行ったのもあり、この単語を口にした瞬間に歳がばれます) あまり見かけないのは当然で、穴を空けて紙パイプの取り付けと、穴無しの無加工に比べれば、同じようなユニットをもう一つ使う方が、原価が高くなりますから。 メインのウーハーが音を発生させ、その裏側の音(振動)でパシップを動かし、低域を重ねる方法です。 こちらも結構低域が相当出ます。ですが、2つのユニットを動かさなければならないので、アンプの性能は求められます。安価で低域再生力が弱いアンプだと、十分な性能は出せない場合があります。バスレフの様な濁りは無く、密閉型の様なクリヤーな印象ですが、アンプの件と遅延音はこの方式の欠点かもしれません。

記3つの方式では、外れは少ないと思います。重低音派及び小型を求めるのであればバスレフ。音のスピードを意識するなら密閉。サブウーハーがあるなら密閉型も面白いと思います。高級システムをお考えで、少々こだわりの物をお求めであれば、パシップはお勧めかと思います。



●デザインから見える音の世界

デザインとは、必要な条件を満たし、色や素材その形から何かを感じさせる物です。もちろんネガティブなイメージを与えない、感じさせない事もデザインと言えますが。デザインは、当然何かを主張していますので、そこからこの商品の音を想像する事ができます。全うなスピーカーメーカーであれば、自分たちの音のイメージや主張を壊すデザインは選びません。 PA(プロオーディオ)の様に、コンサートのイメージを追う場合がありますが、そのデザインも使われ方をイメージした物だと思っています。デザイン的にしっくりしない物は、多分その音も好みに合わない場合があります。見ていて、眺めて納得できるかを買う前に考えてみるのも楽しい事だと思います。オーディオ自体それぞれの自己主張その物ですから、自分を表に出して好きなデザインを選んでみてはいかがでしょうか。仮に、デザインと音が大きくかけ離れている場合があったとしましょう。それは、全うなメーカーではありませんので、そうした団体の商品を念頭に置いてでは、選び方も何もありませんので割愛いたします。

 

●ユニットの違い(ウーハー編) 


同じスピーカーユニットと言っても、大きさや細かな形が様々で、その種類は数えきれません。価格のバラツキも激しく、厄介なのは高ければ間違いないと言えない場合もあります。何処かの代理店がぼったくってるとか、中間業者が多すぎて高額になるとか様々ですから。

まず音を決める重要なパーツのコーン紙を見てみましょう。コーン紙と言えども、紙ばかりではなく、アルミやガラス繊維、カーボン繊維、ポリプロピレン、中にはセラミックまであります。概ねこれらの素材の差には特徴があり、開発者は開発意図を素材で反映している場合が多く見られます。そこから読み取ることで、自分の好みのスピーカーなのか判断の材料になるはずです。

 

・ペーパーコーン


スピーカーの基本中の基本ですが、紙に始まり紙に終わるそんな奥深い素材です。紙だけでなく、ガラス繊維やその他の混ぜ物をしたり、上に樹脂コーティングを施したりと様々です。基本的に、中高域に有利な素材で、中型のフルレンジではペーパーコーンが主流なのはそのためです。綺麗なまたは艶やかな中域を楽しむのであればペーパーコーンが有利で、出来ればガラス繊維の様な重たくなる物を混ぜていない方が、より音の鮮度が高いと思われます。ですが、剛性が低く歪みやすい欠点もあり、サイズ比で考えれば、重低音は望めません。 悩ましいのは、音の鮮度が高くなり過ぎると、きつい音になってしまいますので、どんな物が混ぜてあるのかを知って、完全な紙のみにこだわらない方が良いかと思います。 ガラス繊維等の混入物は、その分低音に有利ですが、高域まで伸びませんので、低い音が殆ど出せないリボンツイーターや小さなツイーターとの合わせには注意が必要です。 面をコーティングしているタイプは、6~8KHz付近にピーク(固有の共振音)を持つ物が多く、その事も知っておいた方が良いかもしれません。後に触れますが、どこまでをこのユニットに担当させているか、クロスオーバーから判断し、ピークの問題が無い事を確認する事も出来ます。ウーハーのピークに関しては、フルレンジ相当に使用する時に問題となり、メーカー製の完成品スピーカーでは、その問題のまま販売するとは思えませんので、参考までに。


・アルミコーン


マグネシウムやその他の金属系も同じと考えられます。紙に比べてどうしても重くなるため、音の重心が低い印象になります。そして必ずどこかでピークがあり、その部分をどうやって自然な音のしているのか、メーカーのテクニックが求められます。重量と剛性が高い事から低音に強く、サブウーハーではアルミコーンが主流です。フルレンジの場合、先程のピークを20KHz付近に持って行き、合わせてフルレンジとしている商品が多く、 個人的にはキツサが歪めません。こちらも、高域が不利ですので、ツイーターとの合わせには注意が必要です。


・カーボン繊維


ガラス繊維よりは軽く紙より剛性が高いので有効な素材です。しかし、繊維を束ねるためにどうしても樹脂を使う為、反面樹脂コーンの要素を含みます。基本的にピークは少なく、繊細な表現も得意です。ガラス繊維の物よりもかったるさが無く、外さないと言えますが、概ね高価になります。アルミやガラス程の低域は望めず、低音重視の商品には使わないと考えれれます。


・ガラス繊維


カーボンとアルミの中間。素材が安価な事から良く見かけます。比較的自然な音で、多くのユニットメーカーがこれらの商品を出しています。大体、どこかにピークがあり、概ね4.5KHzあたりが一般的でしょうか。後に触れるポリコーンよりは脈動感があり、飽きない音とも言えます。


・ポリコーン


ポリプロピレンの素材を使ったコーンで、殆どピークを持たず、音も自然でこの素材での失敗は考えにくいと思います。それほどまでの素材で、何故ほとんどがポリコーンにならないのかと言えば、ここにオーディオの悩ましさがあります。完ぺきに自然であれば、それは理想のはずですが、長く聴いていると飽きてしまいます。ホームオーディオの殆どは、その味付けを楽しんでいるとっても過言ではありません。周波数的乱れが少ないポリコーンですが、紙の様な癖が無く、無難で脈動感に欠けます。脈動感のある音を目指すには、この素材は不向きですが、それは逆に聴く音楽や環境等で欠点にもつながります。それ以外で、ポリのイメージが良くないので、販売しづらい点もあります。


・セラミックやその他


セラミックは普段使うお茶碗と同じ素材で、厚さ0.2㎜程に加工した物です。 多分100万円以下の商品は殆ど無いので、存在だけ紹介しました。極めて繊細で硬い音の印象です。音の良さや扱い易さより物珍しさでしょうか。多分ドイツ系の音を好む方にはお勧めです。

コーン紙の色々も重要ですが、その他の作りにも開発者の意図が現れる部分があります。


・スピーカーエッジ


コーン紙とフレームを接続する部分で、コーン紙を元の状態に戻す役割もあり、重要なパーツです。昔はウレタンで更に古くは、コーン紙に波型の形状を持たせ、そのままフレームに接着したフィックスドエッジと言う形式もあります。今は殆どがラバーエッジで、耐久性が高く、20年ぐらい経ってもボロボロになる事はありません。ウレタンのせいぜい5年に比べれば、かなり良くなったと言えます。 小型スピーカーユニットの低音は、このラバーエッジが産出していると言う人もいます。なるほど、同じエッジをウレタンに換えると、これまでの様に低域は出なくなります。これは裏返しの関係で、低音が強くなる分スピード感が低下し音の印象が重たくなることが言えます。 重低音が欲しいのであれば、このラバーエッジを太く大きくするのが一般的です。低音派の方は、相対的にラバーエッジの太い物を選べば外しません。

反対に、軽い音の印象で、中音域の繊細さを求める場合、もしくはスピード感を求める場合、反対の選び方が適当と言えます。昔のフィックスドエッジやウレタン、ラバーエッジでも細い(小さい)物は、中音域を重視し設計していると思われます。これらの事は、せいぜい18cm程度までのユニットの話で、大きさから十分に低域を出せる大型ユニットの場合は、必ずしもそれに当たりません。全てがこの傾向に有るかと言うとそう言う訳ではないのでご注意意を。

白いところでは、ラバーエッジの出っ張りが逆になっているユニットも有ります。かまぼこ状の断面が表から見て、引っ込んだ状態(通常の裏返し)になっています。これも、ラバーエッジの袋状の部分が、低域を発生させると同時に、音の濁りを生むため、それを軽減することを狙っていると思われます。 V内臓ユニットは、カバーに緩衝しないようにこの様な作りがありますが、それを除けば、中高域を重視した設計だと考えて良いでしょう。フルレンジやミッドレンジ(昔のスコーカー)等に多く使われています。


・ボイスコイル(VC)


ウーハー(フルレンジ)のコーン紙とエッジだけでも、音の好みを考える要素となると思います。それ以外では、スピーカーユニットは、マグネットとコイルで電気的に音を(振動を)発生させているのはご存知だと思います。そのコイルをボイスコイルと言い、コイルが巻いてある筒をボビンと言います。近年、このボビン(ボイスコイル)の径を大きくした物が多く見られます。 一般的には直径25mmですが、32mm、50mm、中には3インチ75mmの物も小型スピーカーユニットに存在します。 この特徴は、ボイスコイル(VC)の径が大きいほど、高域の再生が難しく、反対にウーハーの仕事である低域のスピード感を高め、低域の解像度を上げる効果があります。フルレンジでは25mmが一般的なのはそうした理由で、基本的に大型VCではツイーターに任せる周波数帯が増える事になります。中型のスピーカーであれば、75mmのVCも歯切れの良い低域を再生しますので、優れた方式ですが当然高価になります。ボビンの素材も吟味が必要で、低額商品には使われないでしょう。更には、これほどのVCを瞬時に動かすには、それ相当のアンプが必要です。物にもよりますが、最高の性能を出すには、30万円のプリメインアンプでは難しいでしょう。


・フレーム(フランジ)


よく議論になるのは、フレームで、アルミダイキャストフレームと鉄板をプレスしたプレスフレーム、樹脂で出来た樹脂フレーム等があります。ここまで挙げてきたコーン紙やエッジ、そしてVCに比べ実はそれほど音への影響は少ないと考えています。 プレスフレームでも良い音のスピーカーは、いっぱい有ります。見た目の豪華さが一番の理由でしょうが、プレスフレームの場合、6インチ以上のユニットになると、発生する振動をフレームが受け止められなくなる場合があり、その辺が少々悩ましいところです。スピーカー選びの優先順位としては、下位の方で良いかと思います。


・フェイズプラグ、センターキャップ


最近、コーン中央に弾丸の様な突起が有る物が多く出回っています。これをフェイズプラグ(弾丸の様な)と言い、音を広く広げる役割をします。 通常、低域から高域に向かって音の広がり(指向性)が狭くなります。要するに高域は直進しかしないので、スピーカーの正面から外れると、音が届かなくなる現象です。ユニット測定でも、30度や60度の角度を付けて想定結果を載せているメーカーも多く、中高域に向けてグラフの上で下がりにくくするのがこのファイズプラグです。一見かっこ良く、良さそうなのですが、フロアー型の大型スピーカーと異なり小型スピーカーの場合、聴く人の方へ向きを合わせる場合が多く、それほど重要なのかは購入者の環境によるところでしょう。フェイズプラグはコーンからの音を反射させて効果を出していますので、物によってはその反射が耳障りとなり得ます。我々はそれを「引っかかる」などと言いますが。


コーン中心のキャップをセンターキャップとかダストキャップなどと言います。このダストキャップが金属系やソフトドームの様な素材のことがありますが、これはユニット中心にツイーターを組み込んだ発想で、当然高域にも有利になります。 ルレンジに用いられますが、この方式も完全ではない様で、別のツイーターを組み合わせた方が、より音が良いと考える設計者も多く、あまり見かけないユニットです。ダブルコーンと言って、コーンの中央に小さなコーンが付いているユニットも沢山ありますが、これも小さいコーンで高域を出す為の物です。周波数的に乱れやすく、どうしてもフルレンジで使いたい館内放送用とか、スペースが限られる場合に使われます。当然悪い方式ではなく、良質のフルレンジユニットも沢山ありますが、このスタイルでの2Way、3Wayはいささかかっこ悪く感じます。

 

・マグネット


マグネットの大きさや種類も音に敏感にかかわる要素です。 通常のフェライトマグネット、昔のアルニコマグネット、最近はネオジムマグネット(ネオジウムは誤記になります)などがあります。この件は、政治的理由もあり今回その件は割愛しますが、当然磁気力が強いほうが安定したスピード感のある音を出せます。 触りだけお話ししますと、安価なフェライト、昔の最高磁気力のアルニコ、現在の最高峰だが熱に弱いネオジムでしょうか。アルニコは熱に強いので、今でのマニアックな品物に使われますが、世の中のニーズが全く無く、殆ど生産されていないので高額になります。 磁気力が強い方が、ボイスコイルが円滑に働き、正確な再生ができます。磁気力だけでなく磁気密度が深く係わっていることから、スピード感を求めるならネオジムが理想と言えます。

ウーハーだけでもこれほど情報があり、あるスピーカーの外見を見ただけでも、設計者の考える音作りが垣間見えると思います。


●ユニットの違い(ツイーター編)

形式の違い ウーハーと違ってツイーターは様々な形式があります。その全ては私も把握しきれていないと思います。近年最もポピュラーなのは、ソフトドームではないでしょうか。 結論から言えば、この方式が最も理想的といえます。 同じドームでも金属系や中にはダイヤモンドもありますが、よほど高級な商品でなければ、金属系は概ねノイズを発生させます。 某エンジニアの方と「なぜ金属ドームがなくならないのでしょう」と質問したら、シンバルなどの金属系の楽器の音に合うと、売り込み文句で宣伝してしまったためとの事でした。性能の良いソフトドームであれば、金属ドームである必要はあまりないように感じます。それ以外に、リボンツイーター、ホーンツイーター等々色々あるのですが、問題はその音の発生メカニズムです。ウーハーは概ねVCとマグネットによるコーン紙の振動で音を出しますが、特にリボンツイーターは、マグネシウムやアルミその他の素材も、直接振動板に電気を流し振動させる物が多く、全く方式が異なります。 音楽の音は、本来低域だの高域だの関係なく発生した音ですが、スピーカーの場合、ユニット毎にその担当範囲を低域と高域とに分けるため、音のつながりが重要になります。この時に、方式の差が出てしまうことが多く、詳しい方に言わせれば「木に竹を接ぐようなもの」だそうです。弊社でもリボンツイーターを使っていますが、そのつながりに十分注意して、更にはリボンの良さの鮮明さと超高域まで再生できる特徴を生かしています。かなりの実験と研究をしなければ、優れたスピーカーにするのは難しく、ユニットの種類が変われば全て一から実験しなければなりません。失礼ながら、大手の量販品でそこまで研究、実験していたらビジネスにならないと思います。

ソフトドーム以外の方式は、音の張りや超高域再生、繊細な表現など多くのメリットが有りますが、自然な音と言うよりエキサイティングな音なのでしょう。ソフトドームの場合、無難すぎてつまらない場合もあります。ソフトドームが嫌いと言う方はあまりいませんが、例えば、リボンツイーターを嫌う方は結構います。中には小さなペーパーコーンのツイーターもありますが、超安価な商品以外殆ど見かけません。拘りのメーカー等で採用される事が多いので、それらは良質の物だと思いますが、そのメーカーの姿勢等を考慮して検討されると良いでしょう。パーツが安いので、原価を下げるために安価な商品に使われますが、29,800円のミニコンポでもなければこのツイーターに当たることはないでしょう。ウーハーと全く同じメカですので、音のつながりは有利になります。

イーターは、そのスピーカーの特徴をより濃く出すと言っても過言ではありません。先程の金属ドームと同じ様に、金属は金属らしく、リボンはリボンらしく、ホーンはホーンらしくと言った具合に、一般的に知られる傾向を売りにしていると思われます。 要するに、リボンツイーターらしくないリボンツイータースピーカーは作らないのです。一般的に知られる音の傾向は、ここでは割愛しますが、気になる方はお問い合わせください。


●スピーカーボックスの違い

・ボックスの響き


海外のスピーカー製作本によると、箱は絶対に響かせないことが鉄則とありましたが、一言でいえばウソです。これはフロアー型等の大型スピーカーのことを意味し、10cmウーハー程度の小型スピーカーの製作を考えてものではありません。この様なことから見えるのは、響かせる場合と響かせない場合の双方があり、使い方によって分けて考える必要があります。

響かせない方が良い場合は、相対的にウーハーユニットが大きい場合で、密閉型に多く見られます。 密閉型は、後ろの音を殺してしまう方式ですので、響きがでると濁りに繋がります。 そのほか大型スピーカーは、ウーハーユニットのパワーがありますので、響く箱を使うと鳴き(箱が共振して音を出す)が止まらなくなります。通常ボックスの共振音は、第1から第3波まで三箇所あり、その音が特別大きくなるので、聴いている人は箱鳴りを感じる訳です。 極めて難しいのですが、この3つの共振周波数を上手くコントロールすることで、心地よい音に変化させ、よりスケールの大きい音を作り出すことが出来ます。小さなユニットの場合、箱の響きを伴わない場合、そのユニットの持つ能力のみとなりますので、お部屋を豊かな音で満たすことが難しくなります。単純に考えれば、ヴァイオリンもこの共振を生かした楽器で、あんな小さな楽器が広大なコンサートホールを音で満たすなどできるはずがないのです。コントロールの難しさから、響きを否定する動きもあるのでしょう。


●素材  


次にボックスの素材を考えます。まずその前に、最近アルミ等の金属の箱を目にします。当然好みなのでそれこそ余計な事ですが、アンプやCDプレーヤー、チューナー等、それらが金属でメカニカルな分、スピーカーが家具に近い素材や存在であることで、安心感が生まれると思います。原子力発電所の制御室の様な部屋では、心を落ち着けることは出来ませんよね。オーディオもお部屋で使う物ですから、どこかでほっとできる部分が必要だと思っています。全て金属で、近代的、メカニカル、では窮屈に感じてしまいます。 デザイン的に、アンプやその他の機材の専門機器的緊張感を、より良く見せる(感じさせる)存在こそが家具的スピーカーなのではないでしょうか。見せ方にもよりますが、スピーカーまでアンプのような存在にしてしまうと、それを緩和する別のアイテムが必要になると考えます。

素材は、木材がまず殆どで、その中で無垢材とか、MDF、パーティクルボードなどが存在します。基本的にMDFになると思います。 それは、共振音が小さく、比較的低いところにあるため、安定したスピーカーが作りやすい点にあります。単純に言えば、ごまかし易い訳です。それ以外の素材では、パーティクルボードは大きくても安価なので良く使われます。内部に空洞を持つため、個人的には好きではありません。無垢の木を使うのは、大手ではほぼ不可能でしょう。扱いが大変過ぎます。パイオニアさんで、樽材を使ったものがありますが、開発と生産が大変だったと思います。 この商品を除けば、大手もしくは有名メーカーで無垢材スピーカーを探すのは不可能に近いと考えます。 弊社では、箱根寄木細工や無垢の木材を使った商品を扱っていますが、共振の特徴や生産性から言って、多くの苦労を重ねてきました。 最も重要なのは、「木」を知らなければ、困難だと言うことです。電気やスピーカーを知らない人が作っても、その時点で底が知れますが、反対に「木」を知らない人が無垢材を使ってスピーカーを作っても、商品化は無理でしょう。ヴァイオリンをMDFで作ったら、あの響きは出るでしょうか?それと同じで無垢材は人口木材よりも響き(共振)が強く、扱いには多くの研究が必要です。

このことから、響きを売りにしてMDF等の素材をフルに使っているのはナンセンスで、どの様な使い方なのかを良く調べてから購入されたほうが良いかと思います。

談ですが、箱を響かせないスピーカーは、フロアー型の様に大きい物が主流です。これらは、きちんとした理論と実験によって製品化されていますので、製品的には全く問題はありません。しかし、“響かせない”は、“響かせると止まらない”になる訳で、それ程のパワーを持った設計になっているはずです。そのため、スピーカー以外のお部屋の様々な物を共振させる力があります。 オーディオルームの様な、音響を意識した部屋やそれを取り組む意思が無い場合、極めて不快な音になる場合があります。スピーカーを購入後に、それから音作りと言った方は多く見られます。それがオーディオの楽しさではありますが、ペア100万円で有名メーカーのスピーカーを購入した知人は、気に入った音になるまで10年かかった方もいました。 その間も、機材やその他の物品で、かなりお金を使っていましたので、その辺も趣味として割り切る必要がありそうです。

逆に、箱を響かせるスピーカーは、箱の力も借りた設計ですので、パワー的に響かせないスピーカー程はありません。お部屋の反響、もしくは吸音効果を上手く使いながら良質の音としますので、概ね普通のお部屋であれば、それほど気にせず十分なポテンシャルを発揮できます。 箱(エンクロージャー)の考え方だけでも、多くの設計意図を見ることが出来ます。板厚のぶ厚さを売りにする商品は、響かせないスピーカーと考えて良いでしょう。

余談ですが、オーディオそのものが欧米の文化に根付いています。良く耳にする音に良い木材も、殆どが海外の材料です。それは、国産材での挑戦が殆どなされなかったと言っても過言ではないと思います。マホガニーやローズウッド等の高級材を珍重するのも理解は出来ますが、多くのメーカーで選んだ素材には訳があるはずですから、世間で聞く音に良い木材の種類に、あまり捕らわれない方が良いかと思います。

 

●ネットワーク 


ネットワークとは、複数のスピーカーユニットで、特定の音域を分担させる事で、僅か3種類の電子パーツから、そのシステムを作ります。それをネットワーク回路と呼んでいます。 他に、チャンネルディバイダーと言った機材があり、周波数範囲をコントロールして、それぞれのパートを作ることが出来ますが、各担当毎にアンプが必要になるのが欠点で、マルチなどと呼べれています。 細かい方式や原理は割愛しますが、時折カタログに、“クロスオーバー:2.5KHz”などと記載されていますので、この件も触れておきたいと思います。


・クロスオーバー


先程のネットワーク回路を組んで、例えば2Wayであれば、ウーハーとツイーターで音域を分けるのですが、その分ける位置をこの様に呼んでいます。低い位置を担当するウーハーは、ある周波数まで担当させ、それ以上の高域をカットします。とは言え、音ですから、予定の周波数よりすぐ上の音がいきなり0dBにはならず、徐々に低下して行きます。逆に、高域を担当するツイーターは、いきなり100%の音量にはなりませんから、予定の周波数まで徐々に上がってゆきます。下がるウーハーと、上がるツイーターの音の交点をクロスオーバーと言います。3Wayの場合、ミッドレンジ(スコーカ―)がツイーターとウーハーの立場になるだけの事です。

何故この様な仕組みが必要かと言えば、そもそも人間の聴こえる音の範囲は、20Hz~20KHzと言われています。多分2万Hz(20KHz)の音を認識できる方は殆どいないと思いますが。この範囲を正確に再生できるユニットが有れば、スピーカーユニットは1つで良い事になります。要するにフルレンジと呼ばれるユニットです。問題は、満足な低音を持ち、伸びやかで繊細な高域を持つユニットなど、現在の技術でも出来ないのです。周波数的に満足するユニットでも、聴く側を満足させられるかは別問題で、結果的に2Wayや3Wayが主流なのはその為です。これも余談になりますが、クロスオーバーは、出来るだけ少ない方が音質的に有利だと考えます。現在のスピーカーユニットの性能を考えれば、4Way以上のシステムにする必要が無く、逆に曇りや濁りの音の原因にもなります。4Way、5Wayはメリットではなく、それを売りにするのはナンセンスで、何か深い意味があるのでしょうが、選ぶ際には注意が必要です。

て、クロスオーバーの数値から見える事は、どのユニットがどこから担当しているかが分ります。例えば、小さなリボンツイーターや、小型のホーンツイーター等は、基本的に4.5KHz以上での使用が理想です。また、極小さなソフトドームの場合も、あまり低い音を担当させるのは少々酷と言えます。それらのユニットで、クロスオーバーが2.5KHzなどと記載されている場合、中高域の表現力に疑問が出ます。製作者はもちろん問題ないと言うでしょうが、今までの製作経験から避けたい使い方と考えます。

基本的にツイーターの方が振動板も軽く、スピード感のある再生をします。設計者によっては、出来ればツイーターに担当させるべきだと言う方もいます。ウーハーの場合も、4.5KHz付近でピークを持つ物も多く、担当範囲を広く取ると、低音が弱くなるりスピード感が落ちる傾向があります。フルレンジの様な軽く、点音源的な表現力を期待するのであれば、クロスオーバーが高いスピーカーが理想に近いと思います。重厚感があって、少々華やかな印象をお望みであれば2.5KHz程度が理想に近いと思われます。一般的に、スピード重視のジャズ派の人は2.5KHzを選び、クラシック派の方は4.5KHzを好まれるようです。

低音で優れたスピードと強さを求めると、クロスオーバーは250~400Hz程度でしょう。中には600~800Hzの物も多く見られます。どちらにせよ、その低さからツイータに任せるには無理があり、数値的に可能であっても、表現力が落ちてしまう場合があります。 最高に綺麗な高域を求めるならば、6KHz以上が良いように感じています。この矛盾を解決するために、ミッドレンジの3Way方式があると考えています。

ーハーが10㎝~15㎝程度の小型スピーカーであれば、概ね2.5KHz、4.5Khz、6Khzが一般的で、フルレンジ+ツイーターの場合は、12KHz等があります。この数値は、それほど音の善し悪しを決める物ではありませんが、位相の問題が悩ましい場合があります。もちろん設計しだいなのですが、一般的に2KHz程度が、同一平面上にウーハーとツイータがある場合、最も位相を合わせるのに都合が良いとされています。どう言う事かと言いますと、同じバッフル板に双方のユニットが設置してある場合、どうしてもツイーターの方が小型で奥行きが無いので、聴いている人に位置的に近くなります。それだけではなく、ネットワーク回路の関係で、同じ2.5Khzのクロスオーバーであっても、極性の±が逆になる場合があります。簡単に説明すると、音の信号(アナログの場合)は、コイルバネの様に、くるくる回転しています。 ウーハーが2.5Khzで高域をカットしたとして、その位置がたまたま時計で言う12時の場所でも、ツイーターの2.5Khzが12時から始めるとは限らない問う事です。 殆どの場合合っていません。これが最も悩ましい現象です。ネットワーク回路に寄るのですが、このずれを物理的に修正しようとすると、6㎝程ツイーターを後ろに下げる処置が必要です。 階段状や後ろにのけぞったデザインの物を多く見ますが、正にこの位相問題の為に出来上がったデザインと言えます。

4.5KHzや6KHzの様に、高周波になるほど合わせが難しい傾向があり、2~2.5KHzのクロスオーバーが多いのは、それが一つの要因と言えるのではないでしょうか。

ここで注意したいのは、先に挙げたツイーターの種類と担当させる周波数帯が理想(無難)であるかどうかです。位相はどの設計者も注意を払っていますので、それ相応の価格であれば問題ないのかと思います。特に、金属系のツイーターの場合、あまり低い音を再生させると、ノイズを伴う場合がありますので、金属系をお好みの場合はご注意下さい。

 

●サブウーハー

ホームシアターも既に一般的な昨今、サブウーハーそのものは全く珍しい物ではありません。世間にも良質な物が普及し、それらのホームオーディオへの活用も欧米では極めて一般的です。先にも申し上げましたが、小型スピーカーに過度な重低音を求めると、スピード感が鈍くなり、中高域の表現力が劣化する場合があります。 スピーカーユニット自体も、2Wayや3Wayが存在するように、1つのユニットで全てを賄う必要はないのです。なぜか完成品のスピーカーでは、全てを盛り込もうと、あるいは盛り込まれることを良しとする風潮がありますが、それこそがリスクに感じます。 日中のある程度音量を上げられる時など、サブウーハーを併用されるのは、賢い選択に思います。



●商品への思い入れ


後になりますが、商品への思い入れは製作者や関係者ばかりの分野ではありません。最終的に、購入者が購入前にその商品へ特別な思い入れが出来るか、もしくは思い入れがあるかが重要です。Yahooオークション等で、国産メーカーのスピーカーが数百円程度で出品されているのを良く見かけます。古いしそれしか価値が無いからと言えば確かにそうですが、思い入れがある物(商品)を、使わないからと言って100円、200円で売れますか? その運命になった物には気の毒ですが、購入者の思い入れが全くなかったとしか言いようがありません。

特にオーディオ製品の場合、合わせる機材、部屋の環境、置く位置、音楽ソース等で随分変化します。先にも触れましたが、有名メーカーで100万円もしたスピーカーでさえ、納得が出来るまで手を入れて10年です。 これが良いかどうかは別として、とことん付き合う気が無い物を購入しようとすれば、直ぐに飽きてデメリットばかりを追いかけてしまいます。 本当に失敗しない買い物は、正にこの思い入れが持てるか否かではないでしょうか。このスピーカーから、気に入った音が出て、それがお部屋に置いてあるその光景をイメージした時、心地よい気分になれるのか。その事を良く考えてください。みんなが買うから、口コミが適当に良いから、大手だから、その様な購入の仕方はとてもお勧めできませんし、そもそも日用品ではありませんので、その程度の理由であれば、買うのをやめた方が良いでしょう。視聴できない場所に住んでいるから、などと言ったリスクを諦めにつなげる事無く、思ったこと、感じたことをどんどん問合せしてください。

ゆっくりと、自宅と同じ様な環境で、沢山の物を視聴できる方はむしろ極少数だと考えます。これまで書いてきたことが、少しでもお役にたてば幸いに思います。


●弊社の取組 


上記の内容を知ったうえで、弊社の商品を見ていいただければ、何か感じていただけることがあると思います。 小型スピーカーにむやみに重低音を追求せず、音の重心は幾分高く軽い印象で、繊細な表現力と透明感を意識して製作しています。ユニットその物は他のメーカー製ですが、そのような事を重視して選んでいます。 ユニット選びに置いては、“失敗しない”選び方が出来る様になりました。

現在は、ユニットと完成品のスピーカーメーカーは別で、大手でもユニットメーカーからOEMを受けています。弊社もそうですが、世界中のユニットメーカーの無数にあるユニットの内、どれを選ぶのかは作りたい音のイメージに合わせているはずで、それを見抜けばお客様のイメージに合う物が見つけ易いと思います。

、この文章は、高井工芸代表の高井和夫が独断と偏見で作成しましたので、このことで気分を害されたり、不快感を感じられた方には、心よりお詫び申し上げます。これ程多くの商品が存在する中、普段感じている内容をまとめたものですので、それとは該当しない、あるいは相反する場合も有り得ると思います。その際の責任は、負えませんのでご了承ください。 また、現代のネット社会をメリットを生かすための内容であり、試聴その物を否定する意味合いは全くありません。ですが、一部の業界の方やマニアの方で、その行為そのものを聖域と捉え、初心者や一般の方との距離を取ろうとする言動も見られます。ご自宅から、ご自分の思うままにを応援する弊社の暴挙的行為他ありません。何かのお役にたてば幸いに存じます。



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